若いながらも歴史あり 96.3.2@新宿LIQUID ROOM [DVD]
???まるで高校生のような顔をした茂木欣一(ドラム)のキレまくったビート、クールな表情の柏原譲(ベース)のとんでもなく濃密なグルーヴ、青い髪、青い衣装というファッションをまとったHONJI(バイオリン)が生み出す狂おしい音色、ZAKと西川一三による、演奏全体のイマジネーションを増幅していくPAオペレーション、そして、シンプルな言葉と繊細なメロディで物事の本質を貫く、佐藤伸治のボーカル。レゲエ、ダブ、ロック・ステディをベースにしたバンドサウンドと哲学的な深遠を持つソングライティングによって90年代を駆け抜けたバンド、フィッシュマンズ。大傑作アルバム「空中キャンプ」リリース後に行われたツアー「若いながらも歴史あり」の最終日、96年3月2日の新宿リキッドルームにおけるライブ・アクトを収録した本作は、彼らの音楽がもっともマジカルに輝いていた瞬間を、ダイレクトに映し出している。特に「ナイトクルージング」における、あまりにも儚く、あまりにも美しい佐藤君の歌には、ゾクゾクするような悲しみが宿っていて、おもわず泣きそうになる。こんなバンドはもう、絶対に出てこないだろう。(森 朋之)