地獄の狂宴~ROCK THE NATION LIVE! [DVD]
???顔一面を塗りつぶしたメイク、黒いスパンデックス・スーツ、6インチはある厚底靴といういでたちの4人の男たち、それがロック・バンド、キッスだ。ほかのバンドがうらやむようなぶっ飛んだバカバカしさの域に達している。『地獄の狂宴~ROCK THE NATION LIVE!』は、派手なコンサート映像と短いが楽しめる舞台裏映像をミックスしたものだ。後者ではメンバーがメイクをしたり、ファンと戯れたり、ボウリングを楽しむ姿が拝める。現在残っているオリジナル・メンバーは、ポール・スタンレーとジーン・シモンズの2名だけだが、キッスは以前とまったく変わっていない。彼らはロック史上で例を見ないほど恥ずかしげもなくファンに迎合するバンドであり、作り物めいたヘヴィ・メタルとポップを融合させたバンドは、無慈悲にもボーイズ・グループのような売り込みをされてきた。だが、火吹き、血吐き、爆発といったトレードマークの演出は健在で熱さが伝わってくる。スタンレーとシモンズが現在50代であることを考えると、この盛り上がりは驚くべきことだ。あの白塗りメイクの長所は、観客に実際の年齢を気づかれずに済むことかもしれない。歌詞に取り上げられている話題はセックス、パーティー、そしてまたセックス――今どきの世の中では、むしろ新鮮かもしれない。キッスは、近頃のハード・ロックが躍起になって誇示したがるナルシストめいた病的な感性を嫌う。このバンドは、人生がどんなに厳しいか、自分たちがどれほどへこんでいるかと泣き言を口にすることはないだろう。果敢にファンを得ようとする姿勢は、音楽と同じぐらい彼らの成功に貢献している。コンサート終盤では、「歌え!」と客にふる声とリフがよく聞き取れなくなるが、観客の熱気は一向に衰えない。その間、カメラは“Kiss Army”のロゴTシャツ(とサンダル)姿の大きな胸の女たちを延々と捉え続ける。DVD特典として、数曲を“Kiss Powervision”で視聴できる。これは、好きなバンド・メンバーにフォーカスできるというものだ。(Bret Fetzer, Amazon.com)